ボーダーライン。Neo【下】
「うん。時差を考えたら、まだ着く事は無いと思うけど。ここでジッともして居られないから」
「ふぅん。ま、頑張んな?」
「おう」
返事をしてから、ふと後の事を考え、もう一度母さんに目を向ける。
「そう言えば、父さんって帰り遅いの?」
「ううん? いつも夕方ぐらいだけど? 何で?」
「あー……、いや。ちゃんと彼女に会って上手く行ったら、ここに連れて帰ろうと思って」
「……なるほど」
僕の返答と表情から察し、母さんはにやりと笑った。
「じゃあその時はまた連絡してね?」
了解の有無を返し、リビングの戸口へ足を向けると、「ちょっと待って、ひぃ君」と婆ちゃんが引き止めた。
「これ持って行って?」
婆ちゃんから受け取った紙袋をキョトンと見やると、婆ちゃんは「お弁当」と笑顔で言った。
「お腹が空いても待ち合わせ場所から離れられないでしょう? すれ違うといけないし持って行って?」
お昼はどこかで買ってから行くつもりだったが、こういう気配りは正直言って嬉しい。
「うん。ありがとう、婆ちゃん。昼飯に貰うね?」
「ええ。行ってらっしゃい」
婆ちゃんの声を背に、紙袋を持って家を出た。