赤い花、君に見せたい青
夜が明け切る前、私は鎧を身に付けて城を出ようとしていた。そんな私を同じく鎧を身に付けた何千人もの兵たちが見つめている。その表情はどれもが真剣なものだ。ここにあるのは緊張のみ。

これから、私たちは戦へと向かう。時は戦国時代。争いが常に起こり、多くの血が大地に流れていく時だ。

「では、向かおう」

私はそう言い、馬に乗ろうとする。その刹那、「お待ちください!晴喜(はるよし)様!」と声が聞こえてきた。その声を聴くと、私の胸が高鳴っていく。泣いてはならないのに、泣いてしまいそうになった。

「小菊(こぎく)……」

振り向けば、まだ寝巻きの白い着物姿の小菊が走ってくる。小菊とは半年前に結婚したばかりだ。

「小菊、まだ朝早いだろう。早く部屋に戻れ」

私は小菊に笑いかける。しかし、小菊は「ここで見送らせてください」と今にも泣き出しそうな顔をしていた。私も泣きたくなる。しかし、男が泣いてはいけない。
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