赤い花、君に見せたい青
城の門を出る前、私は後ろを振り返った。小菊はまだ私を見つめている。

ふわり、とその顔が優しい笑みに変わった。先ほどまで不安げな顔をして泣いていたのに、美しい笑顔を見せてくれている。その笑顔は、何よりも美しい花だ。

私も微笑み返す。小菊を、この平穏な私や民の居場所を守るために……。

前を向けば、空から太陽が登り始めているところだった。夜明けの空は吸い込まれてしまいそうなほど美しい。

その空を見上げていると、何故か悲しみが胸に渦巻いた。



「こちらの兵の数は一万。それに対して向こうは三万という数です」

「……そうなると、この作戦の方がこちらにとって優勢になるのでは」

重い空気が張り詰めた戦場に作られた場で、私たちは作戦を練っているところだった。こんなにもみんなが緊張するのも無理はない。相手が冷酷なことで有名だからだ。

多くの者がその相手に戦を仕掛けられ、領地を奪われた。そこに住んでいた民は虐殺されたか、奴隷にされたかのどちらかだと聞く。争いたくなどなかったが、戦を仕掛けられてしまったのだ。戦わなければ民や小菊が危ない。
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