赤い花、君に見せたい青
「晴喜様、そろそろ我々も兵たちのもとへ向かいましょう」

作戦を話していた家臣たちが言う。私は「わかった」と頷き、立ち上がった。ここには戦場の状況を城に報せる者が残ることになっている。

「猿彦(さるひこ)」

私はその場に残ることになった猿彦に声をかける。猿彦は「ハッ!」と言い、その場に跪いた。私は「顔を上げろ」と笑い、猿彦が顔を上げるのを待って真面目な顔を見せた。

「……もし、我々の状況が不利になった場合、お前はすぐに城に戻って小菊を遠くへ逃してほしい。もちろん小菊だけでなく民も、逃せるのなら逃してやってほしい」

「承知いたしました!」

猿彦はそう言い、私に頭を下げる。私はその肩をポンと叩き、「頼むぞ」と言った。城に笑顔で帰って小菊を抱き締めたい。しかし、それが叶うかどうかはわからない。きちんと頼んでおかねば……。

馬にもう一度乗り、私は武器を手に並ぶ兵たちの後ろに立つ。私たちの軍の数メートル離れたところでは、敵が同じようにしてこちらを見つめていた。
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