赤い花、君に見せたい青
ほら貝の音がどこからか響いてくる。それを合図に我々の兵と相手の兵が一斉に動き出した。途端に、静かだった朝の平地は騒がしくなる。

キンと刀同士がぶつかり合う音、鳴り響く銃声、空を飛んで大地に突き刺さっていくやの群れーーー。どこからか悲鳴が聞こえ、地面に誰かの体から流れた血が滴り落ちていく。

「晴喜様!」

兵の一人で私が我にかえると、敵の一人が剣を振り上げているところだった。私は慌ててその剣を受け止め、相手に斬りかかる。

「晴喜様、ここは戦場です!気を張り詰めてください!」

「わかっている。すまん」

敵を攻撃しながら言う家臣に私は素直に謝って戦い続ける。この手で私はどれだけの命を奪うのだろうか、傷つけるのだろうか。できることならば、生まれたばかりの赤子のように綺麗な手のままでいたかった。

気が付けば、太陽の位置は高くなっていた。空を見上げるたびに戦い始めてこれほど経ったのかと驚いてしまう。この空を小菊も見上げているのだろうか。この空は、戦場の真上にあるというのに青く美しい。
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