すれちがいの婚約者 ~政略結婚、相手と知らずに恋をしました~
アプローチ?
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「今思えば、ひどい婚約者だな…」
「今頃気付いたんですか?」
呟きに呆れ声で応えたのは侍従のシリンだ。
彼女が王都に来た今の時期は、政務の来期の予算案の検討を始める時期で、
大学の研究の成果も資料にして提出しなければならない一番大切で忙しい時期なのだ。
毎日図書館で資料と照らし合わしながら、夜遅くまで論文をまとめる日々が続いている。
お茶会だ、小旅行だと交流して親睦を深めるのが普通だろうとは思うが、
はっきり言って、構ってる余裕など全然ない。
図書館で会う彼女が婚約者のユナ公女だと自分は知っているからこそ、
言葉を交わし好意的な感情で接して親睦を深めつつあると思っていたのだが、
彼女の立場から見ればキーマ王子との接点は殆どないに等しい。
最初の顔合わせも、朝方まで仕事をして数刻仮眠しただけの睡眠不足の体調で、
気の利いた会話など皆無だったし、婚約者として彼女に何もアプローチをしていない。
普通なら文句のひとつも言いたくなるだろう…。
「公女側から、何か苦情とかは出てないのか?」
「『今は忙しい時期なので、申し訳ない』とは伝えておりますので」
「そうか…」
あまり期待もされていないのかもしれない。
所詮、政略結婚。
そう思われていても仕方ない。自分もはじめはそう思っていた。
彼女の困った表情が思い浮かぶ。
図書館で顔を合わせる“ベルデ”では、本当の彼女の笑顔は引き出せない。
「今思えば、ひどい婚約者だな…」
「今頃気付いたんですか?」
呟きに呆れ声で応えたのは侍従のシリンだ。
彼女が王都に来た今の時期は、政務の来期の予算案の検討を始める時期で、
大学の研究の成果も資料にして提出しなければならない一番大切で忙しい時期なのだ。
毎日図書館で資料と照らし合わしながら、夜遅くまで論文をまとめる日々が続いている。
お茶会だ、小旅行だと交流して親睦を深めるのが普通だろうとは思うが、
はっきり言って、構ってる余裕など全然ない。
図書館で会う彼女が婚約者のユナ公女だと自分は知っているからこそ、
言葉を交わし好意的な感情で接して親睦を深めつつあると思っていたのだが、
彼女の立場から見ればキーマ王子との接点は殆どないに等しい。
最初の顔合わせも、朝方まで仕事をして数刻仮眠しただけの睡眠不足の体調で、
気の利いた会話など皆無だったし、婚約者として彼女に何もアプローチをしていない。
普通なら文句のひとつも言いたくなるだろう…。
「公女側から、何か苦情とかは出てないのか?」
「『今は忙しい時期なので、申し訳ない』とは伝えておりますので」
「そうか…」
あまり期待もされていないのかもしれない。
所詮、政略結婚。
そう思われていても仕方ない。自分もはじめはそう思っていた。
彼女の困った表情が思い浮かぶ。
図書館で顔を合わせる“ベルデ”では、本当の彼女の笑顔は引き出せない。