すれちがいの婚約者 ~政略結婚、相手と知らずに恋をしました~
### 36

「ユナを…タヤカウの公女を第2王子の私ではなく、兄上の王太子に嫁がせようとしている」

「でも、ヨウネ様がいますよね」

「他の国でも王妃が複数いるのは珍しくない。そんな中から正妃として表に出るのは地位や後ろ盾の大きな妃であることが多い」

大国の王の血を引くユナ公女は、位置的には今の王太子妃より高貴な血筋。

そうなれはヨウネ妃を押しのけて、正妃になるのは確実といえる。

「私とユナの接点を減らすために、この時期を選び、協力者を使って私の仕事も敢えて増やして邪魔していた。まあ、仕事が増えてたから図書館で会うなんて偶然も起きたんだがな」

まあそれは置いといてと話を先へ進める。

「それをなんとなく悟った兄とヨウネからも忠告を受け、しっぽを出すのを警戒しながら様子見をしていた所に、今日のアレだ」

「今日?」

「宴で話しかけてきた高官がいただろう。兄を勧めた者が」

「突然話しかけてきたあの人か…」

「王太子との姿を周りに見せて印象つけようとしていた」

会議後も外務官たちからの伝統工芸の海外輸出について質問などを受け、対応していて宴に遅れた部分がある。

間に合ったから良かったが、協力者が幾人もいるのが見えてきた。

「だからユナも気を付けていて欲しい」

「王太子殿下との婚約なんて、私が頷かないと無理ですよね?」

「うん、だからユナに直接、何らかのカタチで接触してくるかもしれない」

だから気を付けて、と注意を促す。
< 36 / 39 >

この作品をシェア

pagetop