すれちがいの婚約者 ~政略結婚、相手と知らずに恋をしました~
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誰が主犯で行動を起こしているのか解っているのに、手が出せない…いや、表立っては手を出さないのか。

政局の行方はどちらかに有利になるよう動けば、新たな確執を生んでしまう。

王族は国の最高権力者ではあるが、政治を動かしているのは役職についている官吏たちだ。

そんなことを思って、キーマ様の表情を伺い見る。

私の心配する想いと、協力することに疑いを持っていない信頼の表情。 

だから聞いてみたくなった。

「私が意見を変えて、タヤカウ国が優位になるならと動いたらどうします?」

すっと繋がれていた手を引き抜いて、質問をしてみる。

自分でも不思議なほど、自然にタヤカウ国の公女として高位の態度になる。

将来、王妃の座が手に入るのなら母国に利益をもたらすことが出来るし、姉達を見返すこともできるかもしれない。

「貴女が本当にそうしたいなら止められないし、兄を支えるために全力で阻止はするだろうね」

王子殿下としての真剣な表情できっぱりと言い切る。

「でも、貴女はそんなこと、しないでしょう?」

「そうですね。請われるならともかく、奪うような感性は持ち合わせていないですね」

「それは良かった」

公女としての言葉をしっかり正しく受け止めて返してくれる。

敢えてそれを演じていることを分かった上で。

それは安心感。

ユナとシーラの両方の私自身を認めてくれていたんだと感じる。

思わず笑顔を見せるとキーマ様も表情を緩めて微笑んだ。
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