すれちがいの婚約者 ~政略結婚、相手と知らずに恋をしました~
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「ユナ」
向かいのソファからキーマは立ち上がる。
テーブルを避けるように移動して傍に来ると、ユナも同じように立ち上がった。
彼の手が再びユナの手を捉える。
と同時に翠の瞳に捕らえられた。
「私と正式に婚約をして頂けますか?」
それは協力することを求める確認。
しかし、それ以外の意味が熱を持った瞳に込められているのを感じた。
答えは初めから決まっている。
国を出て、政略結婚を受け入れて嫁ぐと決めた時から。
それでも、こうして求められて問われることに、嬉しさを感じる。
「はい、お請けいたします」
こぼれそうになる涙を我慢して、つないだ手を握り返す。
次の瞬間、引き寄せられて抱きしめられていた。
「良かった」
耳元で聞こえる安堵のこもった呟き。
彼の腕に捕らわれて温かい体温を感じて、ドキドキと共に安心感が広がる。
ふと緩まった腕の代わりに、大きな掌が頬を撫でる。
見上げた先には至近距離の翠の瞳。
「好きだ」
近づいた唇は、優しく触れてすぐに離れていく。
「私も…好きです」
再び近づいた唇に、瞳を閉じた。
ポイコニー第2王子キーマと、タヤカウ国第3公女ユナの正式な婚約が各国に広められたのはそれから間もなくのことである。
【END】
「ユナ」
向かいのソファからキーマは立ち上がる。
テーブルを避けるように移動して傍に来ると、ユナも同じように立ち上がった。
彼の手が再びユナの手を捉える。
と同時に翠の瞳に捕らえられた。
「私と正式に婚約をして頂けますか?」
それは協力することを求める確認。
しかし、それ以外の意味が熱を持った瞳に込められているのを感じた。
答えは初めから決まっている。
国を出て、政略結婚を受け入れて嫁ぐと決めた時から。
それでも、こうして求められて問われることに、嬉しさを感じる。
「はい、お請けいたします」
こぼれそうになる涙を我慢して、つないだ手を握り返す。
次の瞬間、引き寄せられて抱きしめられていた。
「良かった」
耳元で聞こえる安堵のこもった呟き。
彼の腕に捕らわれて温かい体温を感じて、ドキドキと共に安心感が広がる。
ふと緩まった腕の代わりに、大きな掌が頬を撫でる。
見上げた先には至近距離の翠の瞳。
「好きだ」
近づいた唇は、優しく触れてすぐに離れていく。
「私も…好きです」
再び近づいた唇に、瞳を閉じた。
ポイコニー第2王子キーマと、タヤカウ国第3公女ユナの正式な婚約が各国に広められたのはそれから間もなくのことである。
【END】