心の鍵はここにある
窓際の陽の当たる場所のカーテンレールに、洗い終えた洋服を掛けたハンガーを引っ掛けて、つっぱり棒を棚と壁の間に渡している所に、ハンガーに引っ掛けたタオルや下着を干した。
洗濯かごを洗面所に戻すと、荷物を持って部屋を後にした。
……いよいよだ。
緊張して、表情が強張っているのは自覚している。どうか、直哉さんに嫌われませんように……。
深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、直哉さんの待つ向かいのマンションへ向かった。
オートロックのマンションなので、直哉さんから部屋番号と暗証番号を教えて貰い、それを入力してマンション内に入った。
エントランスの奥にあるエレベーターに乗って、直哉さんの部屋のある7階ボタンを押す。
エレベーターが動いている間に改めて深呼吸をする。ドキドキが止まらない。
こんな状態で、私は大丈夫なのかな。女の子の初めてって、凄く痛いって聞くし。
行為自体も、AVなんて観た事もないし、テレビドラマや映画を観る程度の知識しかない。
どうすればいいかなんてわからないし、ましてや上手く出来る自信なんてない。
どうしよう……。
不安なまま、エレベーターは七階に到着した。
直哉さんの部屋は七〇三号、エレベーターを降りて一番奥だ。
ドアの前に立ち、もう一度だけ深呼吸して覚悟を決めると、インターフォンを押した。
中から直哉さんの声と足音が聞こえ、ドアがすぐに開かれた。
「下のオートロック、無事に解除出来た?」
直哉さんの問いに、頷く私。
「ちゃんと自分で解除出来たよ。あと、お弁当ありがとう。晩ごはん作る約束だったのにごめんね。
明日の朝ごはんは食材あるの? ないなら、荷物置いて買いに行ってくるよ?」
照れ隠しで、少し饒舌になる。
そんな私の事をお見通しな直哉さんは、優しい笑顔で迎え入れてくれる。
帰宅 2
私の荷物を軽々と持ち上げ、先に部屋に入る直哉さんの後ろを、部屋の至る所をキョロキョロしながらついて歩く私に向かって爆弾発言だ。
「明日は多分、里美は起き上がれないかも知れないから、明日の朝ごはん用にパンも一緒に買っといた」
……どれだけハードな事が待ち受けているんだろう。私は何も言えなくて、赤面したまま固まってしまった。
そんな私を見て、直哉さんは私の荷物を足元に置き、そっと抱き寄せ耳元で囁いた。