心の鍵はここにある

「もし、藤岡主任が家電いるのあれば、使って貰おうかな……」

 多分リサイクルショップに持ち込みしても、金額は僅かな物だとしたら、使ってくれる人にあげた方がいいかも知れない。

「もし可能なら、管理会社にエアコン置いて行っていいか聞いてみてもいいんじゃないか?」

 その考えは全く思い付かなかったので、明日管理会社に連絡する事にした。

 家具家電で処分するのは、冷蔵庫と洗濯機、電子レンジ、組み立て式のパイプベッドなので(ベッドはお兄さんが使っていたのがあると言われた)、リサイクル業者さんに引き取りに来てもらうのが手っ取り早いだろう。
 お弁当を食べ終わると、部屋を案内された。

「こっちが兄貴の使っていた部屋なんだけど、クローゼットは里美が使って。で、寝室はこっち」

 その隣の部屋に通された。現在直哉さんが使っている部屋だ。

「あっちにもベッド置いてるけど、里美もこっちで一緒に寝るんだからな」

 そう言って、私を背後から抱き寄せた。
 身長の高い直哉さんに抱きしめられ、多分背後から見ると私の姿なんて見えないだろう。

「片付けしておくから先にシャワー浴びておいで」

 ……いよいよだ。私は、ぎこちなく頷いて、着替えを持って案内されたバスルームへと入った。


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