心の鍵はここにある
女子は定員を満たしているからと、男子の方でマネージャーが欲しいと部長同士で協議した結果、気付けば私は男子バレー部のマネージャーになっていた。
私は自分の学力に見合う、それで尚且つ祖父母の家からも近いこの高校を受験して無事に合格した。
次の父の異動が出ても、今回は松山に残ろうと思っていたから、両親や祖父母にも相談して、了解を得た上での受験進学だった。
だから高校生活は、三年間この松山で過ごす事が出来ると思っていた。
あの日までは……。
女子バレー部のマネージャーのつもりで入部したのに、いざ入部すると、いきなり男子バレー部のマネージャーを言い渡されて、正直かなり戸惑った。
さつきは、そんな私を心底羨ましがっていた。
そりゃそうだろう。
マネージャーで入部していたら、好きな先輩をそばで見ていられたのだから。
でも私は、さつきと一緒にと言う気持ちで入部したので、退部の意思を伝えるべく、バレー部の部長を訪ねて三年の教室へ向かった。
教室は、学年毎に階が違う為に、三年の教室がある3階へ上がるには、相当の覚悟が必要だ。
先ずは、女子バレー部の部長を訪ねた。
三年三組の加藤彩奈先輩は身長が百七十五センチあり、私と二十センチも身長が違う為、近くに行く時はつい見上げてしまう。
「すみません、バレー部の加藤先輩いらっしゃいますか?」
三組の入口で、ちょうど出入口付近にいた背の高い男の先輩に声をかけた。
それが、十二年後の今現在、私の目の前に立っている越智直哉とも知らずに……。
「あれ、一年生? どうかしたの? 加藤……って事はバレー部関係だよな?」
その時は、顔も名前も知らなかった先輩だけど、正統派なイケメンさんだと言うのが第一印象だった。
じっと見つめられると、緊張してしまい、思わず目線を外してしまった。
十五歳の純粋な私は、返事をしてくれたイケメンな先輩の顔をまともに見る事が出来なかった。
無言で頷くと、その先輩は教室内に向かって声を張り上げた。
「彩奈ー、一年生が来てるぞ!」
先輩の声に、加藤先輩が振り返る。私を見つけると、すぐに出て来てくれた。
そして何を思ったのか、そのイケメン先輩も連れて一緒に廊下へと連れ出された。
「一年の五十嵐里美さん、だよね? マネージャー志望の。