心の鍵はここにある

 こいつ、男子バレー部の部長で越智直哉。今日からよろしくね」

 にこやかに加藤先輩が私に話しかけた。
 既に私のマネージャー入部は決定事項なのだろうか。
 と言うか、私に意思確認なく決定されても困る。

「あのっ! ……その事でお話があって来ました。
 私は、女子の方で入部したかったんです。
 男子の方とは聞いてなくて。……だから、その……、入部を辞退したいのですが」

 私の必死な訴えに驚きを隠せない二人。
 男子バレー部の部長、越智先輩は特にそうだ。
 きっと、男子バレー部のマネージャーに志願する人が多い中で、辞退したいと言う人間はいなかったのだろう。
 さつきから、男子バレー部のマネージャーは競争率が高く、特にこの越智先輩目当ての子なんて門前払いだと聞いていたから。
 私は、純粋にさつきと一緒に高校生活を過ごしたかった。
 父の仕事の都合で幼馴染のいない私は、唯一夏休み等の長期休暇に会える友達と、一緒の時間を過ごし、共通の思い出を作りたかったから入部したのだ。
 なのに、さつきと別々になるなら、入部する意味がない。

「それ、困るんだけど」

 明らかに不機嫌な声を出したのは、越智先輩。
 驚いて先輩を見ると、表情も見るからにに不機嫌だ。

「困ると言われても私だって困ります。
 本人の意思確認なく勝手なことをしないで下さい。
 私にだって都合があります。
 女子バレー部のマネージャーじゃないならすみませんが退部します」

 不機嫌な態度を取られてカチンと来た私は、売り言葉に買い言葉ではないが、本音でぶつかった。
 先輩だろうが、関係ない。
 こちらの意思確認もなく勝手な事をしないで欲しい。
 仮に自分がされたらどう思うのか、わかって欲しい。
 私の言葉にハッとした表情を浮かべた先輩。
 それを見た加藤先輩は、珍しい物を見たと言わんばかりの表情で、私に抱きついた。

「いやーん、この子、最高!」

 ぎゅっと抱き締められて、一瞬意味が分からずに固まってしまうと、加藤先輩はすぐにハグをやめて、私の肩を抱きながら越智先輩に言い放った。

「あんたの傲慢さが通じない子がいるなんて、初めてなんじゃない?
 私、この子気に入った!
 女子バレー部に入って欲しいんだけど、生憎マネージャーが今年は定員を満たしててね。
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