心の鍵はここにある
でも、結局はこの言葉が致命傷となり、私の恋心に鍵をかけた。
もう、私の気持ちは直先輩には受け入れられないのだ。
荷物も片付け更衣室を後にすると、太陽は傾き西陽が射していた。
いつの間にこんな時間になってしまったのか。
私達は急いでさつきの家に向かい、さつきの家から自宅に電話をして、今日さつきが泊まりに来る事を伝えた。
冬場だと、急な泊まりは風邪を引いたら大変だからと布団の準備が大変だけど、夏場なら下手したら掛け布団いらない勢いなので、母も特に何も言わない。
転校ばかりで親しい友人が少ない私が、友達を連れて帰る事は、正直言って母も喜んでいる。
それが幼馴染のさつきなら尚更で、家族で大歓迎だ。
夕食はさつきの家で頂いて、お泊りの準備が出来たさつきと一緒にさつきのお母さんの車に乗り込んだ。
祖父母の家はさつきの家の近所だから、本当はそちらの方が都合がいいのだけど、流石にいきなり祖父母の家に行くのは迷惑だろう。
車が祖父母の家の前を通過し、私の家に車が向かう。
さつきのお母さんとも私が幼少期から面識があり、娘の友人と言うよりも長期休暇中に帰省する親戚の一人扱いだ。
「里美ちゃん、さつきが迷惑かけるけどよろしくね」
「えー、お母さん酷い! 私が里美のお世話しに行くのに」
「何言ってるの、あなた寝言が凄いでしょう」
「えっ、嘘、ホント?」
「ホントよ。里美ちゃん、かなりうるさいから気をつけてね」
親子の会話を聞かながら、私も会話に頷いたり笑ったりと、楽しい時間を過ごした。
そして車が家の前で止まると、母が出迎えてくれた。
「さつきちゃん、いらっしゃい! 守野さん、今日は里美がお世話になりました」
「五十嵐さん、いつもさつきが里美ちゃんにお世話になってます」
母親同士の会話が始まり、私達は先に家の中に入った。
どうも親同士の会話に付き合ってると、話が長くなるので私達は私達で勝手にやろう。
さつきの荷物を私の部屋に運び、私も部屋着に着替えた。
食事は済んでいるので、お互いに順番でお風呂に入り、キッチンからお菓子とジュースを部屋に運ぶと準備万端だ。
「お泊り久しぶりだよね」
「うん、去年は塾通いで夏休み潰れたもん」
「里美がこっちに帰って来るたび、お泊り楽しみにしてたんだよ」