心の鍵はここにある
バックの中からスマホを探して画面を見ると、先輩からのライン通知だった。
『無事に帰宅しました』
その一言のみ。このメッセージに一体どう返せばいいのだろう。
しばらく悩んだものの、既読スルーするとまた何だかややこしい事になりそうなのは分かりきっているので、おやすみなさいのスタンプを押して、スマホをテーブルの上に置いた。
そうして髪を乾かした後、頭が混乱していた私はやりかけていたハンドメイド作品を仕上げ、眠りについた。
翌朝目覚めると、身支度を済ませ、軽く朝食を摂り、いつも通りの時間に部屋を出た。
エレベーターでエントランスまで降りて行くと……。
ーー昨日、再会した先輩が待っていた。
「おはよう、途中まで一緒に行こう」
「……ストーカー?」
「お前っ、彼氏に向かってストーカーはないだろうがっ。そうか、あれか、里美はツンデレか?」
「デレてませんし。……それに、私は先輩を彼氏と認めてませんが」
私の言葉に、瞠目する先輩。先輩の口から意外な言葉が出て、私の心を掻き乱す。
「はぁ? 十二年前から、里美は俺の彼女だろう」
確かにカレカノの関係でしたね、ニセモノのだけど……。
「十二年前って……。あれはニセモノのカレカノでしたよね?」
「それでも里美は俺の彼女なの、行くぞ」
先輩は強引に私の右手を取り、駅に向かって歩き出した。