心の鍵はここにある
女子会
就職して四国を離れて、こうやって誰かと一緒に過ごすのは、思えば初めての事だ。
元々親しい友人はさつき位で、唯一今でも連絡を取り合う仲だけれども、他の人は、転校したらそれで繋がりは切れていた。
だから、春奈ちゃんを部屋に招待するのは内心かなり勇気がいった。
まともにきちんと会話をしたのは昨日が初めてだったけれど、直感で彼女とは仲良くなれそうだと思ったから。
春奈ちゃんも同じだったら嬉しいな。
春奈ちゃんも嬉しそうに一緒に買い物について来てくれた。
「昨日、結構色々食べたから、今日はあっさりした物がいいですか?」
「そうだね、でも実家から野菜を沢山送って貰ったから、根菜類はあるよ。
確かじゃが芋、玉ねぎ、人参、キャベツはある」
「それ、あっさりじゃなく十分お腹に溜まりますよね」
「……確かに」
「献立悩みますねぇ」
「お腹に溜まるけど、コロッケにしていいかな?一人分作るの面倒だから最近食べてなくて」
私の提案に、頷く春奈ちゃん。
私の住むマンションの近くにあるスーパーで、挽肉とパン粉、他にも食材を買い、春奈ちゃんがデザートを選ぶ。
今時の女の子、お洒落なスイーツを選ぶかと思いきや、彼女が手にしたのは、わらび餅。
「和菓子、好きなんですよ」
照れながら話す春奈ちゃんに好感が持てた。
マンションに到着すると、立地の良さを羨ましがられた。春奈ちゃんは自宅通勤で、住宅街に住んでいる。
でも、夜は人通りが少ないらしく、余り遅い時間に帰宅する場合は家の人に迎えに来て貰ったりするそうだ。
だから余り遅くまでは居られない。
エレベーターで五階まで上がり、鍵を開けて招き入れた。
狭い一Kの部屋は、二人で定員を満たす広さ。
電気を点けて部屋に入って貰うと、春奈ちゃんは途端に歓声をあげた。
「うわぁ、可愛い!これ、ハンドメイドですよね?」
春奈ちゃんが口にしたのは、作りかけのスマホケース。
今晩レジンでコーティングする予定だった為、そのまま放置していたのを忘れていた。
「あ、うん、ありがとう。それ片付けるから適当に寛いでてくれる?」
私は食材をキッチンに置いて、テーブルの上に出しっ放しのそれらを箱に仕舞い、テーブルの下へ片付けた。