心の鍵はここにある
「……もしかして思い出しちゃった?」
口に付けていたグラスの水を思わず吹き出しそうになり、気管支の変な場所に水が入ったのか、むせ込んでしまった。
そんな私を、春奈ちゃんは優しく背中をトントンと叩いたり、私の置いたグラスをこぼさない様に、テーブルの隅に避けてくれたりと、甲斐甲斐しくお世話してくれる。
さすが女子。
私なら何も出来なくてオロオロになってしまいそうだ。
咳き込み過ぎて、涙が出て来たが、最悪な事に、コンタクトレンズをがずれてしまったみたいで、右目の視界が急にぼやけた。
咳き込みが落ち着いて来たので、コンタクトレンズがずれたのでトイレで直したいと言うと、春奈ちゃんは、自分が見るからここで直してと、恐ろしいことをサラッと言ってのける。
「鏡で見るより、私が見る方が絶対早いです。鏡もあるし、拓馬くんは放置で大丈夫ですから」
春奈ちゃんはそう言ってバッグの中からコンパクトを取り出すと、私の顔から伊達メガネをそっと外し、レンズがずれて涙目になっている右目を凝視した。
「レンズ、どこにズレたか感覚分かりますか?」
春奈ちゃんの質問に、右目に神経を集中させた。
「……目頭かな、左に眼球を動かすと痛い」
涙がポロポロ落ちてくる。
「ちょっと失礼しますね」
春奈ちゃんはそう言って、私の右目の目頭の下に指を当て、少し下の瞼を下にずらした。
「あっ、ありましたよ。
……そしたら、まずは黒目を外側に動かして下さい。
うん。……そしたら、ゆっくり私の指先を見て下さい」
春奈ちゃんは人差し指を立てて、私の右目の外側からゆっくりと左にスライドさせて行く。
その動きに合わせてゆっくり私も黒目を左に動かして……。
春奈ちゃんが瞼を指で固定してくれているので、すんなりとレンズを直す事が出来た。
「痛かった……。春奈ちゃん、ありがとう」
私は涙をハンカチで拭い、先程春奈ちゃんが外した伊達メガネをかけ直そうと手を伸ばしたけれど……。
伊達メガネは、春奈ちゃんが制してしまった。
「里美さんは、メガネがない方がいいですよ」
「ごめん、返して!」
春奈ちゃんの手を思わず掴み、伊達メガネを取り返すと、すぐにかけ直した。
日頃、私が大声を出す事なんてないので、二人とも驚いている。
「……すみません。コンタクトだけだと目にゴミが入りやすいので」
私は二人から顔を背けて素早くメガネを外すと、ハンカチでレンズの汚れや涙を拭き取った。
素顔を晒す事に抵抗がある私は、苦しい言い訳をしながらも必死でレンズの汚れの落ち具合を確認し、すぐにメガネをかけ直した。
「こちらこそ、すみませんでした」
春奈ちゃんが私に頭を下げて謝った。藤岡主任は、まだ呆然と私達を眺めている。
「……大きな声出してごめんね」
「室内ならメガネ、要らないだろう?」
藤岡主任のもっともな意見に返事が出来なくて、またまた俯いてしまう。
口に付けていたグラスの水を思わず吹き出しそうになり、気管支の変な場所に水が入ったのか、むせ込んでしまった。
そんな私を、春奈ちゃんは優しく背中をトントンと叩いたり、私の置いたグラスをこぼさない様に、テーブルの隅に避けてくれたりと、甲斐甲斐しくお世話してくれる。
さすが女子。
私なら何も出来なくてオロオロになってしまいそうだ。
咳き込み過ぎて、涙が出て来たが、最悪な事に、コンタクトレンズをがずれてしまったみたいで、右目の視界が急にぼやけた。
咳き込みが落ち着いて来たので、コンタクトレンズがずれたのでトイレで直したいと言うと、春奈ちゃんは、自分が見るからここで直してと、恐ろしいことをサラッと言ってのける。
「鏡で見るより、私が見る方が絶対早いです。鏡もあるし、拓馬くんは放置で大丈夫ですから」
春奈ちゃんはそう言ってバッグの中からコンパクトを取り出すと、私の顔から伊達メガネをそっと外し、レンズがずれて涙目になっている右目を凝視した。
「レンズ、どこにズレたか感覚分かりますか?」
春奈ちゃんの質問に、右目に神経を集中させた。
「……目頭かな、左に眼球を動かすと痛い」
涙がポロポロ落ちてくる。
「ちょっと失礼しますね」
春奈ちゃんはそう言って、私の右目の目頭の下に指を当て、少し下の瞼を下にずらした。
「あっ、ありましたよ。
……そしたら、まずは黒目を外側に動かして下さい。
うん。……そしたら、ゆっくり私の指先を見て下さい」
春奈ちゃんは人差し指を立てて、私の右目の外側からゆっくりと左にスライドさせて行く。
その動きに合わせてゆっくり私も黒目を左に動かして……。
春奈ちゃんが瞼を指で固定してくれているので、すんなりとレンズを直す事が出来た。
「痛かった……。春奈ちゃん、ありがとう」
私は涙をハンカチで拭い、先程春奈ちゃんが外した伊達メガネをかけ直そうと手を伸ばしたけれど……。
伊達メガネは、春奈ちゃんが制してしまった。
「里美さんは、メガネがない方がいいですよ」
「ごめん、返して!」
春奈ちゃんの手を思わず掴み、伊達メガネを取り返すと、すぐにかけ直した。
日頃、私が大声を出す事なんてないので、二人とも驚いている。
「……すみません。コンタクトだけだと目にゴミが入りやすいので」
私は二人から顔を背けて素早くメガネを外すと、ハンカチでレンズの汚れや涙を拭き取った。
素顔を晒す事に抵抗がある私は、苦しい言い訳をしながらも必死でレンズの汚れの落ち具合を確認し、すぐにメガネをかけ直した。
「こちらこそ、すみませんでした」
春奈ちゃんが私に頭を下げて謝った。藤岡主任は、まだ呆然と私達を眺めている。
「……大きな声出してごめんね」
「室内ならメガネ、要らないだろう?」
藤岡主任のもっともな意見に返事が出来なくて、またまた俯いてしまう。