心の鍵はここにある
少しずつ飲み、ようやくむせ込んでいたのも落ち着くと、途端に恥ずかしくなり目線を逸らしてしまう。
そんな私を先輩は可笑しそうに見ながら、自分の食事に戻り丼を掻き込む様に食べ始める。
私も、自分の丼を再び食べ始めた。
食事が終わり食器をキッチンに運び、冷蔵庫から先程先輩から頂いたデザートと、先日スーパーで購入したサイダーと炭酸ジュースを取り出して部屋へと運ぶ。
その間に先輩がテーブルを拭いてくれ、綺麗に片付いた状態になった。
先輩が買ってきてくれたのは、プリンだった。
テーブルの上にコンビニの袋とサイダーと炭酸ジュースを置き、グラスを取りにキッチンに戻っていると、先輩が袋の中からプリンを取り出してテーブルの上に並べてくれていた。
スプーンも付けて貰っているのでこちらで出す必要はなさそうだ。
「サイダー、懐かしいな。覚えててくれてたんだ」
先輩がサイダーのペットボトルの蓋を開けた。
五百mlサイズのものだから、わざわざグラスを使わなくてもいいのかも知れないけれど、一応テーブルの上にグラスを置いた。私もオレンジ味の炭酸ジュースを、グラスに注ぐ。
「里美も変わらずだな」
先輩は目を細めながら懐かしそうな表情を浮かべた。
「この前、スーパーで買い物してた時に目に付いて。先輩に会わなかったら買ってなかったです」
私はオレンジの炭酸ジュースを一口飲んで呟いた。
先輩は、そうだなと返事をすると、プリンの蓋を開けてスプーンですくった。
「プリン食べたくてもなかなか手が出せなくて、今日は里美を口実に堂々と買えたんだ」
嬉しそうに先輩はそう言うと、スプーンにすくったプリンを口へ運んだ。
「うんまぁい! やっぱ甘いもんはいいな。ほら、里美も食べて」
先輩は破顔してプリンを頬張る。先輩のくしゃくしゃになった顔を見て思わず笑みがこぼれる。
私もプリンの蓋を開けてスプーンを入れた。
プリンを口にすると、優しい甘さが口の中に広がって、一瞬嫌な事を忘れてしまう。
私も思わず頬が緩んで、美味しいと呟いた。
私の言葉が耳に届いた先輩は、そうだろうと言わんばかりのドヤ顔で私を見つめるので、笑いがこみ上げてきた。
そんな事でドヤ顔されても困りますが。
美味しいプリンに舌鼓を打ち、しばしの幸せに浸っていたけれど、食べ終えると本題が待っている。