心の鍵はここにある
そちらの方が行きやすいかも。
春奈ちゃんにお願いして、そのお友達の勤務するドラッグストアを教えて貰う事にした。
勤務時間がわかれば、その時間帯に行くと伝えて貰う様にお願いすると、今度は髪型やネイルにもチェックが入る。
……普通、そこまでするの? それは幾ら何でもやり過ぎでは? と反論してみるものの……。
「せっかく可愛くイメチェンするんですよ?
爪は仕事もあるから派手には出来ませんけど、女子は髪型が命です!」
と、力説されてしまう始末。と言われてみたものの、生まれてこの方カラーもパーマも未経験。
「物凄く状態がいいから、きっと美容師さん泣かせかも知れませんね」
と言われてしまう。
「髪にダメージがないから、特にパーマの場合は、下手したらすぐに落ちてしまうかも知れないんですよ。
里美さんの髪は癖のないサラサラだから、ふわふわになったのも見てみたいなぁ。
でもその前に、少しカラーで明るくしてみませんか?」
何だか最早、春奈ちゃんの脳内では、私は着せ替え人形と化している模様。
「そこまでする必要、あるかな……?」
イメチェンする本人である私、何故か弱腰発言。
何故なら、春奈ちゃんが言っているイメージと、今の自分を重ねても、全然想像が付かないから。
ネイルは、私の仕事の都合上、金曜日の備品補充の準備の時に邪魔になってしまうので、せっかくだけど断ると、春奈ちゃんも納得してくれた。
マニキュア自体、日頃から塗り慣れていない事もあり、指先の違和感が持続すると仕事にも集中出来ない。
でも、全身をイメチェンしている自分がなかなか想像つかないでいる私に、春奈ちゃんが爆弾発言をする。
「きっと、越智さんも惚れ直しますよ」
その言葉に、私の顔は一気に赤くなるのを自覚した。顔全体が、熱を持った様に熱くなる。
「里美さん、可愛い。きっと越智さんがこの顔見たら、誰にも見せなくなくてギュッて抱きしめてそうですね」
春奈ちゃんの発言に、尚更恥ずかしくなって来る。恥ずかし過ぎて、うっすらと私の目に涙が浮かぶ。
それに気付いた春奈ちゃんは、しまったと言う表情をして、そっとハンカチを私に差し出した。
「すみませんでした。
誤解しないで下さいね、決して里美さんの事や越智さんの事を揶揄ったんではないですから。
越智さんが、里美さんの事を大切に思う気持ちに里美さんが応えて、自身が変わろうとしている姿をこんな間近で見る事が出来て、私も嬉しいんです。
里美さん素敵な人なのに、仕事以外ではいつも自信がなさそうにされてるから……。
肩身の狭い思いをされていたんじゃないですか?
そんな里美さんが変わろうとしてるのを、お手伝い出来るなんてと思ったら、つい……。
本当にすみませんでした」
深々と頭を下げられて、私は咄嗟に声を上げる。
「春奈ちゃん、頭上げてよ。私もこれくらいの事でこんな反応してごめんね。