心の鍵はここにある
帰郷
春奈ちゃんと仕事帰りにお茶を飲みに行った火曜日から、慌ただしく毎日が過ぎて行った。
毎日先輩が朝、マンションのエントランスまで迎えに来てくれる様になり、一緒に通勤するのは最早当たり前だと言わんばかりに手まで繋がれている。
木曜日の仕事帰りに、春奈ちゃんの従姉さんの勤務するサロンに連れて行かれて、春奈ちゃんも私も、ヘアカラーとカットモデルを体験した。
一緒に並んで施術されたので、お互いの担当者さんを交え、四人で色々な話をして、とても有意義な時間だった。
初めてのヘアカラーは、地毛よりも少し明るい色になり、毛先もかなり梳いてもらった。
やはり私の髪の毛は今までカラーやパーマ等をした事がなくとても状態がいいとの事で、かなり褒められた。
そんな髪の毛にカラーでダメージを与えるのは個人的には嫌だと担当の人は言うものの、技術向上の為に本当にすみませんとかなり謝られながら、カラーをしてくれた。
髪の毛の色が変わるだけで、印象がまるで違う事に驚きを感じた。
毛先も軽くなり、シャンプーも楽そうだ。
実際帰宅して教えて貰った簡単なアレンジにも挑戦して練習して翌朝先輩に見せると、似合ってると褒められた。
そして現在、帰郷の為に先輩と一緒に羽田空港にいる。
松山行きは第二ターミナルからの方が始発便が早いのと便数の多さで、この会社のパックツアーを予約している。
先輩は、航空会社の株主優待券を持っているとかで私から予約の便を聞いて同じ便を予約し、カウンターで手続きをしている。
実家に帰るから宿泊は要らないと言っていた。
私はあれからさつきに連絡して、先輩と再会して、今度こそ本当に付き合う事になった事を報告した。
さつきはびっくりして、すぐに無料通話アプリを使って連絡をして来て根掘り葉掘り聞かれ、突然脈絡もなく急に私に謝った。
『私、里美に言ってない事があったの。
里美が転校した後、先輩に里美の連絡先を教えてって言われたのに、教えなかった。
あの時、先輩の本当の気持ちなんて知らなかったし、里美の事をあんな風に言うなんて許せなくて……。
本当にごめんね……。
あの時に縁が切れたと思ってたけど、再び出会えたなんて、里美と先輩は運命の相手なのかな』
さつきの言葉に、涙を隠せなかった。
私もまさか、あの頃先輩の気持ちが私に向いていたなんて思ってもみなかったから、さつきの行為を許せないとは思わない。
ただ、やはり先輩がはっきりとしてくれていたら、こんなに回り道しなくても良かったのかも知れない。
先輩が自分の事をヘタレと言っていた事を思い出した。
「悪いな、待たせて」
航空券購入の手続きが終わって先輩が駆け寄った。
「里美のチケット予約もカウンターで確認して隣の座席にして貰った」