心の鍵はここにある
そう言って、イタズラっ子の様な笑みを浮かべた。
「さて、そろそろ行くか」
私の手を繋ぐと、一緒に搭乗手続きを済ませ、搭乗口へ向かった。
* * *
羽田から松山までは約一時間半のフライトで、松山空港に到着した時には九時を回っていた。
羽田を発つ前に、さつきに到着予定時刻を連絡しておいたので、多分到着ロビーに迎えに来てくれているだろう。
先輩も一緒に帰ると伝えているので、多分修二くんも一緒に来る筈だ。
先輩も、修二くんと何年も会っていないらしく、まさか二人が婚約したなんて思ってもいなかったそうで伝えたら驚いていた。
飛行機を降りて荷物を受け取り、先輩と一緒に到着ロビーに踏み入ると……。
「里美ー! 先輩!」
さつきが声を上げる。その隣には、やはり修二くんもいる。
修二くんは先輩の姿を見て親指を立てると、隣の先輩もニヤリとして修二くんに合図する。
修二くんが一緒と言うことは、修二くんの車で迎えに来てくれている。
さつきは、自分の車が軽自動車だから、軽自動車しか運転出来ないと豪語していた。
だからさつきの車だと大人が四人で狭く感じるので、ある意味良かったのかも知れない。
修二くんとさつきの後に着いて行き、駐車場へと向かう。
駐車場には、ステーションワゴンが停まっている。
「里美ちゃんは今回何処のホテル予約したの?」
先輩と後部座席に乗り込み、足元に荷物を置いてシートベルトを締めた所で修二くんが私に質問した。
ホテルの名前を告げると、何故そこに? と返された。
今回私が予約を入れた場所は、JR松山駅の近くにあるビジネスホテルだ。
祖父が入院している病院へ向かうバス停も駅前にあり、交通の便が良いと言う理由なのだが……。
「直さんと帰って来るなら、道後とかでも良かったんじゃないか?」
いや、だって付き合う前に予約したんだし。それに第一に、何故先輩と一緒にお泊りの発想なの?
「まあまあ、俺が急遽一緒にくっついて来たんだし、里美を責めるなよ。
いざとなれば、どうにでもなるさ。なぁ?」
そう言って同意を求められても、どう返したらいいのかわからない。
「もうっ、里美をイジるのやめて下さいよ。ただでさえ男の人に免疫なくて慣れてないんですから」