心の鍵はここにある

「そうね、こんなイケメンさんが彼氏だなんて、信じられなかったけど。
 ……里美の事、大事にして下さいね」

 両親の言葉に、私は思わず涙が出てしまう。
 直哉さんは、テーブルの下で私の手を握って、深々と頭を下げた。

「ありがとうございます。今晩、僕の両親にも里美さんを紹介させて頂きます。
 お祖父様に認めて頂いたら、また日を改めてご挨拶に伺いますのでよろしくお願いします」

 両親も納得して帰って行った。
 今回の帰省で直哉さんを紹介出来たのは良かったけれど、まさか本当に同棲の許可を取るとは思わなかった。
 時計を見ると、十六時を回っている。
 今晩、直哉さんのご両親に挨拶すると言うけれど、直哉さんはいつご両親に連絡を取ったのだろう。
 ふと湧いた疑問をぶつけてみた。

「里美が洗面所で化粧直ししてた時にメッセージ送ったら、電車に乗ってる時に返事が来た。
 十九時にホテルに迎えに来るから、一緒に食事しようって」

 まあ、時間的にそうなるよね。……って、こんなラフな格好で大丈夫だろうか。
 直哉さんも比較的ラフな格好だけど、初めてご両親に挨拶するのに、どうしよう……。
 直哉さんに思い切って相談してみると……。

「折角イメチェンして可愛くなってるんだし、新しく洋服買ってみる?俺好みの服、着てみて?」

 表情が変わり、目がキラキラしている。私は頷いて、早速店内を散策する事になった。
 流石百貨店だけあり、品揃えが豊富である。
 がしかし、高級なブランドの服は見るだけで袖を通す気にはなれない。
 色んなショップでお互いが、ああでもないこうでもないと言い合いながら、一緒に洋服を選ぶのはとても楽しくて、時間があっという間に過ぎてしまう。
 そして、最終的に二人が納得して選んだ洋服は、Aラインで膝丈の、シンプルな淡いブルーのワンピースだった。
 でも裾はアシンメトリーで、動くととても可愛いデザインだ。
 ノースリーブだったので、手持ちのベージュのボレロやカーディガン、シャツ等羽織れば露出も低くて、着回しも出来る。値段も、丁度バーゲンの時期と言う事もあり、手頃だ。これはもう、即決で購入するしかない。
 そう思っていたら、何と直哉さんが買ってくれた。

「これからは、俺好みにカスタマイズするから先ずはこれ。
< 96 / 121 >

この作品をシェア

pagetop