心の鍵はここにある
里美の好みも何となく分かったし、またプレゼントさせてくれよ?」
びっくりして言葉が出て来なかった。これは素直にありがとうでいいのだろうか。
「これは十二年分のプレゼント第一弾だと思ってて。気にする事はないから」
いや、それは逆に気にしてしまうんですが……。
それを伝えても、直哉さんは頑として受け付けてくれない。
「それなら、向こうに帰ったら、うちにお泊りして夕飯と朝飯作って」
何気にグイグイと来る人だ。私は返事に困ってしまい俯くと、直哉さんは焦って言い繕う。
「無理させたい訳じゃないんだけど……。
ご両親にも挨拶して、一緒に暮らす許可貰ったから、出来るだけ早く一緒に暮らしたいんだ」
直哉さんの気持ちはわかるけど、展開が余りにも早過ぎて、私の気持ちがついて行かない。
「俺は十二年前の後悔があるから、もう、里美の事に関しては遠慮しない。
やっと捕まえたんだ。片時も離れたくないんだ。俺のワガママだって言うのは分かってるけど、俺を、里美の傍に居させてくれないか?」
そんな風に言われると、断れる筈がない。
「きっと外見の事や、内向的な性格も、俺のせいでこうなったんだろう……?
昔の里美に戻るなら、自信を取り戻せるなら、耳にタコが出来る位、毎日何度でも好きだって言うから。
里美は、本当に可愛いから」
直哉さんの言葉が、私の心の中のしこりを少しずつ解していく。
ねえ、本当に愛されてるって思っていい? こんなに甘やかされて、直哉さんなしでは居られなくなってもいい……?
その後一度ホテルに戻り、先程買って貰ったワンピースに着替えて、直哉さんのご両親からの連絡を待つ事にした。
時間より少し早く連絡があり、ホテルの近くにあるレストランにいるから一緒に食事をしようと誘われて、二人で向かう。
レストランですんなりと席に案内され、改めてご両親とご対面だ。
この時の私は緊張しすぎていて、何を喋ったか正直言って覚えていない。
ただ、この場も直哉さん主導で何とか和やかに過ごしたのは覚えている。
そしてやはり、同棲する事もご両親に宣言し、私の祖父の了承を得たら、日を改めて帰省する事を伝えて、ご両親も喜んでくれていた。