心の鍵はここにある
お見舞い

 翌朝目覚めると、直哉さんの腕の中だった。
 ギュッと抱き締められた状態で、私が動くと起こしてしまいそうだ。
 目の前に、直哉さんの喉仏が見える。顔だけをそっと動かすと、寝顔が見えた。
 睫毛、思っていたよりも長いなぁ。眠っていてもイケメンさんなんて、羨ましい。
 過去の事を気にしてはいけないのは分かっているけれど、直哉さんの寝顔を見た人って、何人くらいいるのだろう……。
 無意識のうちに、わたしの右手が直哉さんの頬を撫でていた。
 私の動きで、直哉さんの瞼がピクピクっと動き、ゆっくりと切れ長の瞳が開いた。

「……おはよう」

「……おはようございます」

「……里美、また敬語に戻ってる」

「え? ……あ、ごめん」

「いいよ、ゆっくりで。それよりも、昨夜眠れた?」

「うん。ありがとう。……緊張して眠れないかと思ったけど、疲れてたからかな。爆睡してたかも」

「うん、寝落ちは早かったな。俺より先に寝息が聞こえた。……里美が腕の中にいると、安眠出来るな」

「ホントに……? 寝返りとか出来ないし、しんどくない?」

「抱き枕的存在?」

 イタズラっ子の表情だ。

「目が覚めて、里美が腕の中にいるのがこんなに幸せな事なんだって知ったから、これから毎日こうして目覚めたいな」

 直哉さんの視線が熱を帯びている。私の身体を抱いていた左手が私の頬に回り、直哉さんの唇が私の唇に落ちてきた。
 キスされただけで、蕩けてしまう。角度を変えてキスが深くなるにつれ、何だか私の身体に異変が起こる。
 胸がキュッと締め付けられて、身体の芯が、下腹部が疼いていく……。今までに感じた事のない感覚だった。
 やだ、私、どうしたんだろう。
 もっと触れて欲しい……。本能で感じている。キスだけでこんなになるなんて……。

 身体が密着した状態で、私の下半身に、直哉さんの熱い塊を感じる。
 思わず今以上に身体を密着させて、直哉さんを感じたい。
 私の動きに、直哉さんは驚いて一瞬腰を引いたけと、私はそれを無視した。
 すると口の中で、直哉さんの舌が私の舌を絡め取る。私の頬に添えられていた掌は、私の後頭部をしっかりと掴み、動くに動けない。直哉さんのキスと愛撫に蕩けさせられてしまう。
 いつしか頭を支えていた手は、私の胸まで下がって来て、優しく揉み解している。

「……あっ……ぅん……、あ……、なお、……んっ……」

 いつの間にか、私の口からは淫らな声が出ていた。
 直哉さんは熱を帯びた瞳のまま、私の耳元で囁く。

「里美……、ヤバい。そんな可愛い声を聞いたら最後までしたくなる」

 直哉さんの下半身も自己主張をしているのが伝わるだけに、何と返事をすればいいのかわからないけれど……。
 このまま最後までしたい……。私の本能が直哉さんに訴えている。

「今日、お見舞い終わって、向こうに帰ったら、里美をちょうだい」

 直哉さんの言葉に頷いて応えると、最後にチュッとリップ音を立てて私の首筋にキスを落とし、私の身体を離した。

「夕方までのお預けなら、我慢する。さっ、そろそろ起きて準備するぞ」

 私の腕を引っ張って身体を起こしてくれると、直哉さんは先にシャワーを浴びると浴室へ向かって行った。
 交代でシャワーを済ませると、朝食バイキングを食べにホテル内のレストランへと向かった。
 夏バテ予防でしっかりと朝食を食べようと思うのに、何だか胸がいっぱいで食欲が湧かない。
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