日向ぼっこ
好きになる瞬間

_…それは突然訪れた。


「えっ、傘持ってきてない…」


天気予報では晴れだったはずなのに、今あたしの上にはどす黒い雲が雨を降らしている。


…走るか。


学校から駅までは走って、幸にも五分くらいで近いし。


鞄を守るようにして雨の中走り出した。


結構降っていて、もうあたしの制服は濡れていた。


制服が肌に引っ付いて気持ち悪い。


うー…帰ったらお風呂入ろう。


風邪引きそう。


バシャバシャと走ってたら、もう駅に着いた。


うわー、あたしだけこんなに濡れてるの。


とりあえずハンカチで拭いて、電車に乗る。


まぁまぁ満員電車で、居心地が悪かった。


濡れてるから他の人まで濡らしてしまわないように、ぎゅっと身を縮こませてドアのところに立っていた。


電車に揺られてしばらくすると、お尻に何か当たった。


…え?


「…っ」


最初はトントンと触られてるだけだったのに、もうがっつり触られてる。


えぇ…!?


ち、痴漢!


怖くて声が出ない…。


震える体を自分自身で抱きしめて、その場で固まる。

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