本日よりニセカノはじめました

私は彼の優しさに惹かれていた。



以前、私は彼のオーダーを間違えてしまったことがあった。

私は間違えたことにも気づいてなく、出した後で店長が気づいた。彼が常連であり、いつもと違う飲み物だということでわかったのだ。

私は彼にすぐに謝り、急いで正しいドリンクを出そうとしたが、彼は『今日はこれが飲みたかったんだよ』と穏やかに笑いながら許してくれた。


この日から私は彼が特別なお客様に変わった。

よく見ていると、誰にでも優しく紳士的で、彼がとても素敵な人だということがわかった。


今だって、私が負い目を感じないように、あくまで自分の都合で彼女役が欲しいと言ってくれている。それも嘘ではないかもしれないが、おそらくストーカー被害への対策を考えてのことだろう。




そんな彼とこうして2人で話しているだけで奇跡みたいなことである。

一生分の運を使い果たしているのではないだろうか。
< 5 / 10 >

この作品をシェア

pagetop