本日よりニセカノはじめました
本当は断るべきだって分かっている。
でも、彼の視界に入りたいと思ってしまった。
少しでも彼のことを知りたくなってしまった。
「、、、よろしく、、お願い、、します、、、」
頭で考えるより先に口が動いていた。
辿々しい口調に、蚊の飛ぶような声しか出せない自分に嫌気がさす。
うまく伝えられたのだろうか。
恐る恐る彼を見上げた。
彼は優しく笑っていた。
どうやら私のこんな意気地のない返事でさえも拾ってくれたようだ。
「帰ろうか。」
私の不安を感じ取ってくれたのだろうか。
彼はそう穏やかな声で言うと、手を差し出してきた。
その手は、暖かくて心地よくて、私は幸せで溶けてしまいそうだった。