極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
そう思ったら、胸がちくりと痛んだ。

ついさっきまで千紘社長には私以外の女性を幸せになってほしいと望んだはずなのに。

お見合い写真に視線を落とす彼の姿を見ていたら、なぜか胸が苦しくなって、私はそっと視線をそらした。

そのとき、社長室に内線の音が響き渡る。

私は急いでソファから立ち上がり、社長のデスクへ駆け寄ると受話器を取った。すると、相手は秘書室にいる天野室長だった。


『笹崎。克爾さんまだそこにいるか?』

「はい。いらっしゃいます」


ちらっとそちらへ視線を向けると、克爾前会長はまだ千紘社長とお見合い写真を見比べている。


「克爾前会長がどうかされましたか」

『それが、さっき受付から連絡が来て、下のロビーに奥さんがお見えになっているらしい』

「奥さまですか?」


私がそう答えると、気になったのか克爾前会長が私へ視線を向けた。
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