極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
すると、すかさず千紘社長が「じぃちゃん」と声を上げる。


「笹崎さんにそこまで頼めない」

「それなら千紘、お前がきれいに片づけなさい」

「だから、俺は忙しいんだって」

「それだから笹崎さんにお願いをしたんだ」

「でも、彼女は俺の仕事上での秘書であって、プライベートなことまで頼んだら悪いだろ」


千紘社長が苛立つように髪をかき回すと、うんざりするような深いため息を落とした。

どうしよう……。

千紘社長の荒れた部屋の片付けをきっかけに、再びふたりの間に険悪な雰囲気が流れてしまっている。ここは私が間を取り持って解決させないと。


「あ、あの……」


控え目に口を開くと、千紘社長と克爾前会長の視線がほぼ同時に私に向けられた。


「私でよろしければ、千紘社長のお部屋の片づけに行かせていただきますが……」


克爾前会長のお願いに一瞬だけ戸惑ったものの、初めて千紘社長の荒れた部屋を見たときから、私もあの部屋のことは気になっていた。
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