極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
「社長。克爾前会長ですが、さきほど奥様とご一緒にお帰りになりました」


執務机のそばに寄って報告すると、千紘社長は決済待ちの稟議書に目を通したまま重たい息を吐き出した。


「やっと帰ったか。じぃちゃんの見合い話にはもううんざりだ。悪いけど、今度じぃちゃんが見合い写真を持って訪ねてきたら追い返してくれないかな」

「そう申されましても……」


いくら千紘社長のお願いとはいえ、私に克爾前会長を追い返す勇気はない。


「それと、俺の部屋の掃除だけど、来なくて大丈夫だよ。じぃちゃんが迷惑なお願いをしてすまなかった」

「いえ、私は迷惑だなんて思っていません。克爾前会長ともお約束をしたので、しっかりと社長のお部屋の片づけをさせていただきます。千紘社長こそ私が伺ったらご迷惑でしょうか?」

「いや、そんなことはない。むしろ、片づけてもらえるならすごく助かる」

「でしたら、お掃除に伺わせていただきます」


きっぱりとそう告げると、千紘社長は少し考える素振りを見せたあとで「それじゃあよろしく」と苦笑した。


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