極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました

なるべく考えないようにして、さっと掃除機をかけると寝室を後にする。

リビングに戻ると、次はフローリングの水拭きを始めた。

普段から掃除をしていない千紘社長の部屋は、掃除機だけでは完全にはきれいにはならない。持参した雑巾を水に濡らし、固く絞ってフローリングの床を拭いていく。そのあとは空拭きもしてきれいに仕上げた。

すると、荒れ放題だったリビングが見違えるほどすっきりとした空間に蘇る。片付いたリビングを見渡しながら達成感に浸っていると、玄関から扉が開く音が聞こえた。

いつのまにか時刻は十六時を過ぎていて、どうやら千紘社長が帰宅したらしい。

お迎えするため玄関へと向かうと、そこには靴を脱いでいる千紘社長の後ろ姿があった。


「社長。おかえりなさいませ」

「ただいま」


そう答えた千紘社長が、じっと私を見つめている。


「社長、何か……？」


その視線が気になり問いかけると、目の前の彼はハッとしたように首を振った。