極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
「あっ、いや、ごめん。笹崎さんがエプロンを付けているから」

「えっ……あ、すみません」


エプロンをつけていることを忘れていた。社長の前で失礼だったかもしれない。

慌てて外すと、「可愛かったのに残念」と千紘社長の呟きが聞こえて、またドキッとしてしまう。そんな動揺をごまかすように、私はエプロンを素早くくるくると丸めて胸に抱えた。

それから廊下を進む千紘社長の後ろをついていく。彼の手がリビングの扉を開き、一歩足を踏み入れると立ち止まった。


「すごいな。ここまできれいにしてしまうなんて。さすが、笹崎さん。ありがとう」

「いえ」


私は小さく首を横に振る。とりあえず、千紘社長のお役にたてたようでよかった。


「お礼にこれから食事でもどう? 夕食に笹崎さんの好きなものをご馳走したい」

「お食事は結構です。そういうつもりでお部屋の掃除をしたわけではありませんので」

「そうか。それなら、一人で寂しく食べるとするよ。あっ、これ畳んでくれてありがとう」


千紘社長はソファの上の洗濯済みの服を手に取ると、着替えるため寝室へと消えてしまった。
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