極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
「千紘社長の好きな食べ物は何ですか?」

「好きな食べ物か」

「それをメインにして作りたいと思います」

「そうだな……」


スーパーの店内を買い物カートを押して歩きながら質問すると、千紘社長は腕を組んで難しい表情を浮かべてしまった。


「俺は何が好きなのだろう。なんでも好きだから、これといって思い浮かばないな」


好きな食べ物を尋ねただけなのに、仕事のときのように真剣に考え始めてしまった。その答えが出るまで待っていると、しばらくして「あっ」と千紘社長が声を上げる。


「ひじきの煮物が食べたいな」

「ひじきですか?」


まさか千紘社長の口からその料理名が出るとは意外だ。


「子供の頃に祖母がよく作ってくれたんだ」

「おばあ様ですか」

「俺の両親はとにかく忙しい人たちだったから。子供の頃、俺はほとんど祖父母の家に預けられていて、祖母の料理をよく食べていたんだ」

「そうだったのですね」
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