極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました

掃除をしているときにも思ったけれど、千紘社長の家のキッチンはほとんど自分で料理をしている形跡がないのに料理器具と調味料だけはしっかりと揃っている。

もしかして、千紘社長のかつての恋人たちがこのキッチンを使って、彼のために料理をしていたのだろうか。

そんな想像をしていると、なんだか胸の奥がきゅっと締め付けられるように苦しくなった。

そういえば、千紘社長が克爾前会長の持ってきたお見合い写真を見ているときも、私の胸はちくりと痛んだ。

今の感覚もあのときとよく似ている。

でも、この感情の正体が分からない。

どうしてこんなに苦しくなるのだろう……。

考えてみたものの、その答えは出そうにないので、深く追究するのはやめることにした。

それよりも今は料理をしないと。

気持ちを切り替えるためにも、小さく深呼吸をしてから両手で軽く頬をたたいた。そして、料理に取りかかる。

その間、千紘社長はダイニングテーブルでノートパソコンを広げて仕事に没頭していた。