極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
「見合いって、この前じぃちゃんが持ってきた?」

「はい」

「それならもちろん断ったよ」

「断ってしまったのですか?」

「ああ。あの場では仕方ないから見合い写真に目を通したけど、最初から断るつもりだったから」

「そうですか」


その言葉に、なぜか安心している自分がいる。

千紘社長がお見合いを断ってよかった。

あの写真の女性たちの中から誰か一人を選ばなくてよかった。

――そんな風に安堵している自分の感情の理由が分からなくて、少し戸惑ってしまう。


「俺が好きなのは笹崎さんだよ。それなのに、見合いなんてするわけないだろ」


じっと見つめられれば、今度は切ない気持ちが押し寄せてきた。

千紘社長がお見合いを断ったとはいえ、私は彼の気持ちには応えられない。

告白の返事を、ずるずるとこれ以上先に延ばすよりも、今ここできっぱりと答えた方がいいのかもしれない。
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