極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
「社長のお気持ちは嬉しいです。社長は素敵な方ですし、尊敬もしています。ですが……」


私は、膝の上の置いている両手をぎゅっと握った。


「社長と、こうして一緒に過ごす相手は私ではありません」

「どういう意味?」

「私では社長の相手にふさわしくありません。社長は、克爾前会長がお選びになった女性とお見合いをするべきです」


千紘社長はいずれ大鷹ホールディングスという大企業を背負って立つ方だ。格式の高い家に生まれて、幼い頃から英才教育を受けてきた。そして、克爾前会長を始め、ご両親や周りの方々に愛されて大切に育てられてきたのだろう。

比べて、私は……。

物心つく頃から両親のいない、少し複雑な家庭で育った。祖父母との暮らしは決して裕福ではなかったし、高校も大学も奨学金をもらいながら通っていた。

そんな私が、千紘社長と釣り合うはずがない。

私たちは、育った環境も、価値観も、社会的立場も、何もかも違うのだから――
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