極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました

「おっと。もうこんな時間か」


千紘社長が慌てたようにイスから立ち上がり、私もハッとして顔を上げた。時計を確認すると、あと十分ほどで経営会議が始まってしまう。


「えっと……資料、資料」


執務机の引き出しを上から順番に開けながら、千紘社長はどうやらこのあとの会議に必要な書類を探しているらしい。


「社長。資料ならこちらにあります」

「あ、ここか。ありがとう」


引き出しの中ではなく、執務机の上に目的の資料を見つけた私は、それを素早く千紘社長へと手渡す。

受け取った千紘社長はイスの背もたれにかけていたスーツの上着を羽織ると、足早に扉へと向かって歩いていく。


「社長。少しお待ちください」


その後ろ姿を私はすかさず呼び止めた。


「ネクタイが曲がっています」

「えっ、本当？」


私の指摘に千紘社長が慌ててネクタイを結び直そうとしている。けれど、片手に資料を持っているためうまく直せないらしい。そうこうしているうちに経営会議が始まってしまいそうだ。