極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
まだ親会社へ行くと決まったわけではないのに、千紘社長の秘書ではなくなってしまうと思うと、少し寂しい気持ちになった。

彼の秘書になってまだ一年だけど、ほぼ毎日のように顔を合わせているから……。


「もしかして、千紘と離れたくない？」


まるで私の心を読んだような天野室長の言葉にドキッとなる。


「いえ、そういうわけではありません」


とっさにそう答えたものの、離れたくないと一瞬思ってしまった。でも、それを天野室長に気付かれたくなくて、慌てて否定の言葉を口にした。すると、なぜかため息をつかれてしまう。


「そんなにはっきりと否定するなよ。千紘が聞いたらショック受けるぞ」


そう言って、天野室長は残りの中華丼を口の中へ一気におさめた。


「まぁ、この話はまだ決定じゃないから。何人かの候補の中に入っているってだけで、今ならまだ断ることもできる。俺としては笹崎にとっていい話だと思うから、このまま候補に残ってほしい。キャリアアップとまではいかなくても、スキルアップにはなるぞ」

スキルアップか……。
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