極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
正直なところ、そういった欲が私にはあまりない。

目の前にある仕事をしっかりとこなして、それに見合うお給料をもらう。そして、そのお金を奨学金の返済と、苦労して私を育ててくれた祖母のために使う。私が働く理由なんてそれだけだから。


「でも、問題は千紘だ。あいつが笹崎を手放すかどうか。副社長はあいつの叔父だから、笹崎を秘書候補に入れたことを遠慮なく抗議するだろうな。笹崎は、千紘の寵愛を受けているから」


独り言のような天野室長の声にピクッと反応してしまう。

もしかして……。


「天野室長はどこまでご存じで?」


私と千紘社長のことを知っているのだろうか。

恐る恐る見つめると、天野室長がニヤリと笑う。


「どこって、お前たちが一夜を共にしたところから、笹崎が千紘に抱き締められながら号泣したところまでかな」


それは、もうほぼ全部知られている。

しかもつい先日のディナークルーズで私が思わず泣いてしまったことまで……。
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