極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
途端に恥ずかしくなり、それをごまかすためにグラスの水を一口飲んだ。

あの夜は、船が港へ着くまで泣いてしまった。

せっかくの景色も途中から見られなくて、せっかく千紘社長が用意してくれたクルージングなのにもったいないことをしてしまった。


「それで、千紘とはどうなってるの?」

「そ、それは……」


天野室長に尋ねられて、私は言葉に詰まる。

どうなっているのかと聞かれれば、私たちの関係は以前と変わっていない。抱き締められたり、キスをされたりしたけれど、千紘社長と私の関係は社長と秘書のままだ。


「ここだけの話、千紘はこれまであまりいい恋愛をしてきていないんだよ」


天野室長は、水の入ったグラスを掴むとそう呟いた。


「付き合う女がみんなクソみたいな女で。あいつ優しくて人がいいから騙されちゃうんだよな」


それを聞いて、私は以前の千紘社長の言葉を思い出す。

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