極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
重役の部屋が並ぶ最上階フロアだけに敷かれたカーペットの廊下を進むと、社長室へ到着した。

入室の前に軽く扉をノックするものの、返事が戻ってこない。いつもならすぐに『どうぞ』と社長の声が返ってくるはずだけど。


「――失礼します」


ゆっくりと扉を開けて入室すると、千紘社長はデスク上のノートパソコンで、日本語と英語を器用に使い分けてテレビ通話をしているところだった。

私の姿を確認すると、彼の視線が部屋の中央にある応接セットへと向かう。どうやら、‟そこのソファに座って待っていて”というメッセージらしい。

私は、移動すると静かに腰を下ろした。

ふとテレビ通話の内容が気になり、そっと耳を傾ける。ほとんど英語での会話だが、私も一応英語は話せるのでなんとか聞き取ることができる。

それから察するに話の内容は、大鷹不動産が現在進行中のロンドンにあるビジネス街に建設予定の高層オフィスビルについて。

打ち合わせの相手は、ヨーロッパ支社長の日本人社員と、イギリス人の現地関係者だろうか。
< 25 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop