極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
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瀧本社長との会食がお開きになり、帰路に着く夫妻を見送った頃には二十一時を過ぎていた。
この後、千紘社長には専属ドライバーの運転する車でマンションまで帰宅していただく予定になっている。私は、電車を乗り継いでアパートまで帰るので、料亭の前で千紘社長を見送る。
「社長、どうぞ」
専属ドライバーの住吉さんが後部座席へと回り素早く扉を開けた。
けれど、いつもならすぐに乗り込むはずの千紘社長の足が動かない。その表情もどこか険しく感じる。
「社長。いかがなさいましたか」
その様子が気になってそっと声を掛けるものの、返事がない。
どうしたのだろうと不思議に思い、私と住吉さんが目を合わせたときだった。
「やっぱり今日は車で帰るのはやめよう」
千紘社長はそう告げると、住吉さんへ視線を向けた。