極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました

「すみません、住吉さん。なんだか今日は風に当たって帰りたい気分なので、車はけっこうです」

「よろしいのですか？」

「はい。徒歩と電車で帰ろうと思います」

「社長がそうおっしゃるなら、承知いたしました」


住吉さんが後部座席の扉を静かに閉める。


「それでしたら、私は失礼させていただきます。社長、また明日会社で」

「はい。迎えに来ていただいたのにすみません」

「いえ、構いません。お疲れ様でございました」

「お疲れ様です」


住吉さんは千紘社長に深く一礼すると、運転席に回って車に乗り込む。そして、車を発進させた。

料亭の前には私と千紘社長が取り残される。

住吉さんの運転する車が見えなくなると、私は隣の千紘社長へと視線を向けた。


「社長。もしかして、体調が優れないのですか？」


風に当たりたいなんて、お酒に酔って気分が悪いのだろうか。

心配になって声を掛けたものの「大丈夫だよ」と千紘社長が首を振る。