極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
「いえ、いいんです。今さら父に会いたいとは思わないので。私は、父と母がどんな出会いをして私が生まれたのか。それが分かれば充分です」


母は、父と身分違いの恋をしていたんだ。そして、自ら身を引いて別れを選び、実家に戻って私を生んだ。


「今、私が知りたいのは父のことではなくて、母の気持ちです」

「お母さんの気持ち?」

「はい」


私は、小さく頷いた。


「子供の頃からずっと気になっていました。母は、私を身籠ったと分かったとき、どう思ったのだろうって。私は、望まれて生まれてこなかったのかもしれないって……」


それについてはきっと母にしか真実は分からない。聞きたくてももう聞けない。

私は、俯いて両手をぎゅっと握りしめた。
< 281 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop