極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
「……あとで、紅茶を持って伺います」


小声で伝えると、電話の向こうで彼が笑うのが分かった。


『ありがとう。楽しみに待っている』


そこで内線は切れて、私はそっと受話器を戻す。


‟君に会いたくなった”


さきほどの言葉を思い出して、自然と顔が緩んでしまう。

この恋は、恋愛初心者の私にとって何もかもが初めての経験だ。

キスにもまだ戸惑ってしまうし、身体を重ねるときも恥ずかしくて翌朝はまともに彼の顔が見られない。

それでも、交際が始まったこの二週間で、私はますます千紘社長……千紘さんを好きになっている。

恋をするとこんなにも幸せで、満たされる気持ちになれるなんて初めて知った。

たぶん私は今、とても幸せだ……。


「――おい。何ボケっとしてんだ」


不意に後ろから声を掛けられ、驚きでピクッと肩が跳ねた。

振り向くと、天野室長が私を見下ろして立っている。
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