極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
「スケジュール調整ありがとう」

「いえ」


私は、秘書として当たり前のことをしただけ。それなのに千紘さんはいつも、どんな小さな仕事でも必ず私に『ありがとう』と言ってくれる。

それは彼の秘書になってから今日までずっとそうで、そんな千紘さんのもとで働けてやっぱり私は幸せ者だと思う。

できれば私はまだ千紘さんの秘書でいたい――


「そういえば奏介から聞いたよ」


紅茶を飲み終えた千紘さんが、カップをソーサーへと戻しながら口を開く。


「桃子、大鷹ホールディングスの副社長秘書の候補になっているらしいね」

「……はい」


正直なところ、天野室長から大鷹ホールディングスへの異動の話をされても、あまり実感が湧かなかった。自分が親会社の副社長秘書として働いている姿が想像できない。

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