極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
「社長が自ら御子柴さんの事務所を訪ねて、丁寧に説得をされたからではないでしょうか」


その場に私は居合わせていなかったので、ふたりの間でどんなやり取りがあったのかは分からない。

でも、千紘さんのことだ。きっと粘り強く、けれど強引でもなく丁寧に御子柴さんに設計の依頼を請けてもらえるよう話を進めたのだろう。


「あのデザイナーズマンションの建設予定地は駅から少し離れていたりと立地に少し問題があるんだ。それでも何とか魅力的でいいものを作ろうと森山さんたちのチームが、有名建築家の御子柴に必死に声を掛けているのを知っていたからね。彼らの力に少しでもなれてよかった。あとは、森山さんたちに任せれば安心だ」


穏やかに微笑み、千紘さんは軽く腰かけていたデスクから降りる。

そして背後にある窓へと歩みより、外の景色を眺めた。その背中を見つめながらふと、以前の千紘さんの言葉を思い出す。
< 308 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop