極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
「待って」


けれど、不意に手首を掴まれて引き止められてしまった。


「何かあった? さっきから一度も俺の目を見てくれない」

「いえ、何も……」


顔を覗き込まれて、私はとっさに視線を下に落とした。

意識的に千紘さんの顔を見ないようにしていたわけではない。でも、妊娠のことを隠しているせいか自然と彼から視線をそらしてしまう。

そんな私に千紘さんはさらに尋ねてくる。


「午前中の用事は無事に終わった?」

「はい」

「そうか。それならよかった」


千紘さんには妊娠のことはまだ打ち明けていないので、午前の休みの理由もどうしても外せない予定があるとだけ伝えてある。

産婦人科での今日の結果も、本当なら仕事以外の時間でふたりきりになったときに話をしてみようと思っていた。

でも、それはいつになるのだろう……。
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