極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
千紘さんは、明日か明後日の飛行機のチケットが取れ次第ロンドンへと発ってしまう。

たぶんトラブルが解決する見通しが立つまで、しばらくは滞在するのだろう。そうなれば、妊娠を打ち明ける日も先に延びる。

一人でいつまでも不安な気持ちを抱えているよりも、今、彼に打ち明けてしまいたい。


「あ、あのーー」


けれど、私の声は突然鳴り響いた内線の音にかき消されてしまった。

千紘さんがデスクへと向かい受話器を手に取る。

その会話の内容からして、ロンドンのトラブルの件だろう。

電話が終わるまで待とうと思ったものの、すぐに終わる様子がない。私は、静かに社長室を後にした。

秘書室へと戻り、飛行機のチケットの手配をすると、千紘さんの希望通り明日の便が確保できた。

そして、妊娠のことを伝えられないまま、千紘さんはロンドンへと発ってしまった。


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