極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
きっかけの夜
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五月の連休を終えた、二日目の出勤日である金曜。
私は秘書室で、午後の穏やかな日差しを背中に受けながら、コピー機のスタートボタンを押した。
千紘社長がこのあと控えている会議に必要な資料で、人数分の用紙がトレイから排出されるのを見つめている。
すると、ふと隣に誰かの気配を感じた。
「笹崎、お疲れ」
「お疲れさまです、天野室長」
現れたのは、秘書室の室長である天野奏介さん。
爽やかな短髪の黒髪に、スクエア型の黒縁眼鏡。切れ長の一重に、キリっとした眉。スーツの上からでもわかる鍛えられた体格は、学生時代にラグビーをしていたからだそうだ。性格は、お喋りのお調子者。